オーナーは、徳武睦裕（とくたけ・あつひろ）さん。北欧の家具を扱う仕事を通して北欧の人々が持つ価値観に影響を受け、カフェやベーカリー、断熱性能を高めた住宅設計まで多岐に渡る事業を展開してきた会社「haluta（ハルタ）」 の創業者です。

デンマークにも自宅を構え、年に7,8回も北欧と日本とを往復してきたという徳武さん。その中で見えてきた暮らし方や考え方の違い、日本人が体験したことがない生活を伝えていきたいと、現在は特に、天然資源でできたリサイクル可能なデンマーク製の断熱材、「ロックウール（ROCKWOOL）」の普及活動に精を出しています。

今回ご紹介するのは、そんな徳武さんが軽井沢で運営するhalutaのフラッグシップ兼複合施設、「still（シュティル）」内の1階フリースペースです。

中軽井沢から国道18号線沿いに御代田町方向へ走ると、坂を越えたあたりで、右手に白くモダンな建物が見えてきます。

それこそが、軽井沢の玄関口の役割を担っていた「ドライブイン軽井沢」跡地に建つ「still」。徳武さんは、20年近く使われておらず廃墟になっていた当物件に目をつけ、骨組みを残して全改修。今では2階建ての複合施設として生まれ変わりました。

ですが、まだ「still」は開発途中。ここから更に2,3年かけてさまざまなテナントが入り、敷地内に新しい施設も増えていくのだとか。外には70台分もの駐車場も用意される予定で、多くのお客さんが「still」を目的に足を運ぶ、軽井沢を代表する施設になることは間違いありません。

不特定多数の人を集めるといった従来の複合施設の在り方ではなく、特定多数の人に限定し、解放された時間の提供を目指しているという「still」。

目立つ看板など一切無く、出入り口として凛とした佇まいのヴィンテージ扉だけが用意されています。あえて縦に敷き詰めたという足元のレンガも、徳武さんのこだわり。

外壁をぐるりと覆っているのは、徳武さんが日本での普及に努める、デンマークのロックウール社が開発した断熱材。窓を縁取るように立体的になっているのは、デザイン性だけでなく断熱材の厚みだそうです。

「北欧での暮らしの心地よさは、家具や内装だけではなく、目には見えない断熱材と空調設計から生まれるもの。それを日本でも実現させたいし、人と環境に負荷が少なくサステナブルであることが、何より大事だと考えています」と、徳武さん。

そんな目に見えない配慮が、館内の至るところに落とし込まれています。
1年のうちどの季節であっても、ここに来ればその心地よさを体感してもらえるはず。

1階には、ピッツェリアや農園がプロデュースするレストラン、カフェスタンド、テーラーなどが出店。現在、2階には「haluta」の家具ショールームや設計事務所のほか、学習塾や他社のオフィスが入っています。

今回タイムシェアいただく1階のフリースペースは、ちょうど施設の出入り口から各ショップへと足を運ぶ導線上に広がるスペース。1階の店舗が営業している時には、多くの人が行き交うエントランス的な役割を果たす空間ですが、営業していない時にはかなり静かで落ち着いた空間に。

ギャラリーとしての利用はもちろんのこと、広々としたスペースは、展示会やトークショーなどのイベント利用もよさそう。

白い壁面には、今後プロジェクターを設置し映像を投影できるようにするのだとか。映像インスタレーションや、インディーズ映画の上映会などにもぴったりだと思います。

建具や家具も一つひとつこだわりを持って選ばれており、その美しい佇まいに惚れ惚れします。

施設名の「still」とは、ドイツ語で「静寂」という意味だそう。「この場では、目的を持った人が成熟した時間を過ごして欲しい。心穏やかに静かに過ごしてほしい」という徳武さん。